第17章 沈黙の塔、鴉の宴
「はあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~遣る気出ない」
「朝から壊れた喇叭のような声を出すな太宰」
ソファーでだらーっとしている太宰に声を掛ける国木田。
「私は今ねぇ誰かと対話する気力もないのだよ国……なんとか君」
「不燃ゴミの日に出すぞ 貴様」
「ああ……食事も面倒臭い。呼吸でお腹が膨れたらいいのに……」
そう云うとコンビニの袋からバナナを取り出して、皮のついたままガジガジとかじり始める。
「バナナの皮剥きすら面倒なら餓死してしまえ」
太宰のその仕草にイラッとしている国木田。
そして何かに気付く。
「というかお前、紬は如何した?何時もはちゃんと食事してから来るだろう」
「……喧嘩した」
「はあ?」
太宰がポツリと云う。
「そのせいで寝坊したんだよ」
「!」
国木田の真後ろに紬が立っていた。
完全に寝不足と云わんばかりの顔をしている。
「……。」
紬を無視して牛乳を寝そべったまま飲んで、盛大にこぼす太宰。
「抑も、お前達と敦の連携で街は壊滅を免れた!その翌日に何故そうなる?」
太宰を怒鳴り付ける国木田。
その兄の側に寄って口許を拭いてやる紬。
「それがねぇ……社長から次の仕事を頼まれちゃって……」
起き上がってスペースを空ける。そのスペースに紬が座ると残っている牛乳を紬に渡した。
太宰の朝食が無いなら勿論、紬の分もある筈がない。
本当に喧嘩中なのか?
受け取った牛乳を飲み始める紬を見て誰もがそう思う。
「あー枯木のように唯寝てたい」
「枯木なら可燃ゴミの日か」
「まあ社長からの仕事の手筈を整えているのは私だけどね」
太宰が皮ごとかじっていたバナナを剥いて半分程、千切って頬張ると残りを太宰に渡す。受け取った太宰も普通に食べ始める。
……これの何処が喧嘩中なのか?
「そう云えば昨日、社長と敦が豪く話し込んで居たが――その件か?」
「そうだ」
国木田の背後に何時の間にか社長が立っていた。
社長…福沢の登場に国木田が姿勢を正す。
「太宰」
兄妹揃って注目する。
「マフィアの首領と密会の場を持つ件は進んだか」
兄がチラリと紬を見て頷くのを確認する。
「手は打っていますが――」