第16章 頭は間違うことがあっても
「何か未だ……問題が?」
敦が恐る恐る訊ねると、足の止血をするために屈んでいた紬が立ち上がって口を開く。
「Qが敵の手にある限り連中は何度でもこの大破壊を起こせる」
紬の言葉に反応して、考え込む敦。
「「………。」」
太宰兄妹が目配せをする。
敦に悟られないほどの一瞬だった。
そして兄が続ける。
「唯一対抗可能な協力者である異能特務課も活動凍結された。これ以上は……」
「……太宰さん」
敦の声かけに注目する二人。
「昔読んだ古い書巻にありました。『昔、私は、自分のした事に就いて後悔したことはなかった。しなかった事に就いてのみ何時も後悔を感じていた』」
二人は黙って敦の言葉に耳を傾けている。
「それにこうもありました。『頭は間違うことはあっても、血は間違わない』――空の上で僕はある発想を得たんです。皆からすれば論外な発想かも知れない。でも僕にはそれが僕の血と魂が示す唯一の正解に思えてならないんです」
「「どんな着想だい?」」
「協力者です。彼等は横浜で最も強く誰よりもこの街を守りたがっています。組合と戦う協力者としてこれ以上の組織はありません」
………。
治の思い描いた通り、か。
「その組織の名はポートマフィアです」
敦は力強く云い切った。