第15章 緊急プラン
「何かすごい形相の国木田と擦れ違ったンだけど」
「与謝野さん」
国木田と入れ替わりで入ってくる探偵社専門の女医。
「わー!立派な鎖ですねー!何するんですか?」
紬が袋から取り出した鎖を見て賢治が愉しそうに訊ねてくる。
「万が一に備えた心算だったのだけど……今からこれで国木田君を拘束するよ」
「「は(い)?」」
2人に説明を始める紬。
ガチャリ
それが終わると同時に太宰と国木田が入ってくる。
「準備がいいねえ紬」
「賢治君に呪いが発動した時のために備えた積もりだったんだけど真逆、国木田君とはね」
ケラケラ笑いながら兄に鎖を渡す。
「!」
「如何かしたかい?」
「いや……」
近付いて気付く何時もと違う何か。
「ああ……。大したことなかったよ」
「ならいいけど」
「「「?」」」
心当たりに気付いて紬が返答すると、鎖を受け取る太宰。
今のやり取りで一体何が判ったというのだろうか?
その場にいる全員が思いこそすれど口に出すことは無かった。
何時もの事と云えば何時もの事だからだ。
「国木田君。さ、座って」
「ああ……」
何事も無かったかのように作業を始める太宰。
グルグル鎖を巻き付けて拘束し、タイミング良く紬に渡された南京錠で固定する。
ドオッ!
遠くから爆発音が響く。
「………動き出したかな」
紬がポツリと呟くと国木田にも異変が生じる。
「おい太宰……始まったぞ…!」
国木田が何もない方向を見て云った。
「却説」
「私達も出掛けるとしよう」
「此れはこのままでいいのかい?」
「ええ。拘束が解けないかだけ見ておいて下さい」
「判りました!」
国木田が見えない何かに必死に話しているのをよそにのんびりと会話する四人。
そして太宰兄妹は探偵社を後にした。