第11章 三社鼎立
「おや。何か不満かい?紬」
「不満ではないが私は守勢側を希望するよ」
「………。」
元々、事務員を希望している位ですもンね…と思う谷崎や
イヤイヤ。国木田さんと互角位の体術が使えるなら十分攻勢側にいた方が心強いですよ!…と考える敦や
恐らく妹が傍にいた方が太宰が普段よりも働くだろう…と考える国木田の
視線が一斉に太宰に移る。
「「………。」」
そんな外野をよそに、黙って見つめ合っているだけの二人。
「紬…私の作戦立案が間違っていたことは?」
先に口を開いたのは兄の方だった。
「無いよ。今まで一度たりともね」
「……ならばお前も攻勢として一緒に行ったらいいではないか…」
紬が云うと国木田が呆れたようにツッコミを入れる。
しかし、紬の視線は兄から反れることは無かった。
「治…私の作戦変更案が間違っていたことは?」
今度は紬が兄に問い掛ける。
「!」
「無いね。今まで一度たりとも……」
太宰が頭を抱えて溜め息をつく。
紬はそれを見て満面の笑みだ。
…………。
周りは太宰の最終結論を待った。
「紬は守勢に変更で」
「「「!」」」
兄が折れた。
「理解のある兄で助かるよ」
「やれやれ。この短時間に何時の間に仕入れたんだか……」
太宰兄妹のやり取りをただただ黙って観ている社員達であった。