第9章 吸血鬼化
(フェリドside)
クルルに斬られた腕を患部に当てて修復しながら門から離れる。
案の定計画通りになっている事を僕らしくないが、安堵していた。
今回の計画は天使(セラフ)を1匹逃がし、外で待つ彼に引き渡すだけだ。
だから彼との作戦にアリスちゃんは全く関係ない。
なのに何故危険を犯してまでアリスちゃんを連れて来たのか。
それはここで死なれては勿体無いレアな子だからだ。
フェリド
「クルルがミカくんに気を取られていたお陰かな」
今日のクルルは動揺して、余裕が無かった。
それが無かったらアリスちゃんから滲み出る彼女の気配に気づかれたかもしれない。
フェリド
「ここで死なれたら今までの頑張りが無駄になっちゃう所だったからな〜」
顔にかかる前髪を払うと、あの時より少しだけ成長した顔立ち。
本人は覚えていないけれど、彼女を地下都市に連れてきたのは僕。
本当はアリスちゃんがいた施設の子供全員を殺すはずだったが、この子だけは生かした。
つまりクルルと僕は同罪なのだろう。
そんな事を思い出しながら再び彼女の顔を見ると、先程よりも遥かに顔色が悪くなっている。
フェリド
「人間ってすぐに死んじゃうし…少し急ごうかな」
今にも息絶えそうな少女を抱え直し、僕は屋敷へと急いだ。