第24章 取り憑いた化け物
笑う事、ただそれだけでなぜ欲望を満たせるのか。
そんな疑問が出てくるが、聞こうとは思わないので黙って様子を見る。
深夜
「でも面白くもないとこで笑いたい欲望があったって事が、なんか思った通りの暮人兄さんっぽいなって思うよ」
暮人
「…そうか」
笑顔で、そしてとても嬉しそうに告げた深夜に暮人は下を向きながら短く返した。
怒った様子はないし、むしろ柔らかい雰囲気の暮人。
下を向いたのはもしかすると照れくさかったからなのかもしれない。
そしてそんな柔らかな空気を感じ取ったのは私だけではなかった。
優一郎
「お前なんか雰囲気変わったか?」
暮人
「別に」
暮人は優ちゃんの問いにも顔を上げずに答える。
もうこれ以上の会話はする気がないだろう。
私と同じくそう思ったのか、優ちゃんは暮人からグレンへと視線を移した。
優一郎
「グレン、これどうなってんの?」
グレン
「暮人が人知の外の化け物に取り憑かれた」
簡潔に暮人の状況を説明したグレン。
優一郎
「人知の…何だって?」
それでも優ちゃんには言葉の意味がわからない。
グレン
「同じ柊のシノアにもそいつは取り憑いている」
優一郎
「………」
改めて説明をせずに情報を付け加えた事で、優ちゃんは黙り込んでしまった。
ただそれは意味がわからずに黙ったのではなく、シノアの名前が出たからだと思われる。