第9章 吸血鬼化
(ミカside)
優ちゃんだけは逃げれた。
隣で横たわるアリスも逃がしてあげたかったが、僕の力ではできなかった。
繋いだ手は氷の様に冷たくてもう意識もない。
多分、アリスはもうすぐで死ぬ。
ミカ
「アリス…」
守ってあげられなくてごめんねと心の中で謝る。
そして最後の時まで傍にいようと手を強く握り直した時だった。
吸血鬼1
「な…!?フェリド様が撃たれているぞ!!」
吸血鬼2
「どういうことだ…」
フェリドの姿を確認した吸血鬼達の慌てた声が聞こえる。
貴族が殺されているのだ、慌てるのも当然だ。
吸血鬼3
「家畜の分際で貴族に手をかけるとは…」
吸血鬼2
「殺してやる!!」
彼らは虫の息の僕達を見て、息の根を完全に止めようと向かってきた。
これではどんな酷い殺され方をするのか分からない。
せめてアリスだけでも苦しまずに死なせてあげたいのだが、良い方法が思いつかない。
?
「やめなさい、その人間は私の物です」
吸血鬼が僕達に手をかけようとした時に響いた凛とした声。
吸血鬼1
「じょ、女王陛下!」
吸血鬼4
「あなたがなぜここに…」
ピンクの髪をツーサイドアップに纏め、赤いツリ目の可愛らしい容姿をしている少女。
傍らには1つ目のコウモリの様な生き物が飛んでいた。
その少女は吸血鬼の問いかけに答えることなく、僕らに近づいてくる。
?
「こんなに美味しそうな匂いの血を大量に流して…これじゃあもう死ぬわね」
僕らに話しかけている訳ではなく、独り言の様に呟いた。
そして屈んで僕達の周りに溜まる血を人差し指で掬い取り、口に含む。