第3章 地下都市
どこからか声が聞こえる。
とても澄んだ、よく通る女の声。
???
「終わりのセラフが終末のラッパを吹き鳴らした。世界に鉄槌を下すまでに人間達はどれくらい足掻けるのかなー」
声の主はとても楽しげに話していた。
でもその内容を私は理解する事ができない。
???
「彼も早くこっちに来てくれないかな…そろそろ鬼の進行も進んでるだろうし」
先程までは笑顔を貼り付けているように見えたが、今は恋する乙女のような顔を見せる女。
そんな女の声を聞いていると、何故か私の心は締め付けられる様な不安に駆られていく。
だが頭の中に響いてくるこの声は止まらない。
だから私はただ聞く事しかできなかった。
???
「ねぇ···大好きよ、グレン」
脈拍の無い独り言。
どこかで聞いた事がある名前な気がするが、グレンとはいったい誰だろうか。
必死に考えようとするが、全く頭が回らず思い出せなかった。
優一郎
「…い…!」
???
「それにグレンに教えた優秀な非検体のあの子、良かったな。あまね……」
どうする事もできずに話を聞いていた私の頭に、誰かの声が割り込んでくる。
するとそれに伴うように声も遠ざかっていった。