第18章 執着
君月
「吸血鬼が元人間だと思ってもいなかったのにそう言われたら…」
鳴海
「仲良くなれるって?」
君月
「無理だけど…」
君月が言う通り、理屈はそうでも普通は無理に決まっている。
すぐに割り切れる優ちゃんが変わっているのだ。
鳴海
「普通、私達が感じる吸血鬼の印象は捕食者だ」
シノア
「それも頂点捕食者ですよ」
こんな話は吸血鬼がいない所でするものではないのか。
彼らと話す為に残った訳では無いので、距離を置く様に離れる。
シノア
「人間を捕食し、おまけに死なない。こんなの増えたらすぐ滅亡です」
君月
「もう充分滅亡してんのにな」
初めてこの聴力を恨めしく思った。
普通の声で話しているので吸血鬼でなくても聞こえるだろうが、吸血鬼でなければ一言一句逃さずに聞こえる事はなかっただろう。
シノア
「はい、吸血鬼はエサの捕獲に大慌て。人間保護まで始めます」
ミカ
「…奴らは保護なんかしない」
静かに告げたミカ。
この会話を聞いていた吸血鬼は私だけでなく、ミカもだ。
優ちゃんがいないからか、暗い声で表情も冷たかった。
ミカ
「家畜化だ」
鳴海
「そう、家畜としての保護だ」
その話をぼんやりと聞きながら彼らだった物の前に座る。
もうほとんど残っていないが、ここで2人の吸血鬼の長い命が幕を閉じた。
フオラ・オントにサキラ・ミアス。