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罪と罰【終わりのセラフ】

第18章 執着




その雰囲気を壊したのはお兄ちゃん。


クローリー
「じゃあ話を戻そうか」


少し素っ気ない態度に違和感を感じつつ、先程のシノアの質問を思い出す。


「他にはいない…と思う」

シノア
「思う?」

「他人の血を飲ませるのは吸血鬼の世界では禁忌。だから普通はそんな事しない」


フェリドの様な異常な奴が他にいないとは限らない為、この曖昧な返事しかできない。


君月
「その禁忌を破ったらどうなるんだ?」

クローリー
「処刑か永久拷問だね」


長く生きた末路が永久拷問。
そんな結末を望む吸血鬼はまずいない。
だから禁忌を破る吸血鬼が現れないのだ。


「…永久拷問」


死ぬ事も許されずに与えられる苦しみ。
傷の修復ができる吸血鬼なら体ではなく、心が壊れるのだろう。


「…っ?」


それを考えた瞬間、頭が酷く傷んだ。
そして浮かんできた記憶。
何をしても絶対に割る事が出来無い強固なガラスの中に閉じ込められている私に、その向こうで美しく微笑む悪魔のような女。

その女は私の助けを求める叫びを聞きながら話す事はいつも同じ、グレンという人間の事だけだった。


クローリー
「ほら、いい加減屋敷に入ろう」

「!」


お兄ちゃんの声で現実に戻る。
いつのものかも、本当にあった事かも分からない曖昧な記憶。


「………」


その記憶はもう霞んでしまって思い出せなかった。
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