第18章 執着
私が動かないとお兄ちゃんも手が出せないだろう。
「…お兄ちゃん」
サキラ
「………」
お兄ちゃんに呼びかけると反応こそしたが、サキラは何も言わない。
多分自分の勝利を確信しているからだろう。
「許可を」
クローリー
「………」
気づかれない様に敢えて短く伝えた。
何の事かお兄ちゃんなら分かってくれるはずだ。
クローリー
「…やれ」
サキラ
「何の話を…」
許可が貰えた。
ようやく私達の会話の内容に疑問を持つが、もう遅い。
「っ!」
懐に忍ばせてある短剣に手をかけてサキラの武器を持つ手を蹴り上げた。
サキラ
「きゃっ」
想定通り剣は飛ばされてサキラが動揺する。
「くっ…」
自分の体にくい込んでいたせいで体が斬られてしまい、更に血が流れて辛い。
でもそんな事を気にしている場合じゃない。
サキラは第十一位で実力は勝っているが、本気を出されたら今の私では勝てないだろう。
そう考え、素早く決着をつけるため行動を開始する。
「ふっ!」
蹴り上げた足を戻す際に勢いを付け、その反動を利用して体を思い切り捩った。
それだけであっさり解放された私は間を開けずに地面を蹴り、短剣を抜いてサキラの首を取りに行く。
サキラ
「が…!」
飛ばされたサキラの首。
修復させない為に斬り離された首と体の間に立った時に気づいた。