第16章 名古屋決戦
それすらも分からずに途方に暮れていると、机の上に何か置かれている事に気がついた。
「よいしょ…と」
重たい体を起こして机へと近づく。
そこにあったのは箱と手紙。
手紙にはフェリドの字でしばらく部屋にいて、とだけ書いてあった。
理由すら書いていないフェリドの手紙。
これ以上手紙からは何も分からないので、次に箱の中身を確認する。
「これ…」
箱の中には赤い液体が入っている小さなビンが10個入っていた。
ビンを手に取り、蓋を開ける。
「やっぱり血だ…」
匂いから血だと分かった所で吸血衝動が襲ってきた。
誰の血か分からないものは飲みたくないが、部屋から出られないため仕方なく口を付ける。
「んっ!」
飲み込むといつもと同じ味。
お兄ちゃんの血のようだ。
「ふぅ…」
飲み干して落ち着いたら少し脇腹に違和感を感じた。
「あ、優ちゃんに刺されたんだ」
まるで他人事の様に思い出し、確認してみる。
傷があった位置にはしっかり包帯が巻かれていて、出血を抑えている様だった。
恐らく鬼呪の毒も除去されている。
後は時間を待つしか治す方法がないので大人しくベットへと戻り、目を閉じた。
「………」
吸血鬼に睡眠は必要ない。
でも時間を潰すには1番これが早い。
目が覚める頃にはお兄ちゃんが帰っている事を期待して、私は再度深い眠りに落ちた。