第6章 4年前
優一郎
「来んなってのに!」
茜
「あははっいいじゃーん」
結局俺の言う事は聞かずに、横へと腰掛ける。
そして俺の方へと笑顔を向けて言った。
茜
「私達みんな家族なんだから」
優一郎
「……」
"家族"その言葉に思考が止まる。
あまり覚えていない両親。
その事を思い出しそうになり、頭からその事を追い出していつものように言う。
優一郎
「…俺に家族なんていねえよ」
茜
「いますー、百夜孤児院のみんなは1つの家族だって院長先生言ってましたー」
優一郎
「アホか」
このやり取りも毎回の事で、茜はいつも俺の否定する言葉を全く気にしないのだ。
*****
それからしばらく2人で黙って座っていた。
優一郎
「……」
茜
「あの日…」
今まで黙っていた茜が、突然思い出したかのように話し出す。
茜
「私達がこの地下の吸血鬼世界に連れて来られてからもう4年経つんだね」
あの日とは俺が百夜孤児院に連れてこられた日であり、悲劇が起こった最悪の日でもある。
あの日の出来事は昨日の事のように鮮明に思い出せる嫌な記憶だ。
それは4年前の東京でおきたある出来事。