第11章 葛藤
クルル
「あの吸血鬼がわざわざ連れて行ったのだから生かすはず」
ミカ
「……アリス」
自分の手の平を見つめると命の灯火が消えそうな状況でも僕を頼ってくれたアリスを思い出す。
フェリドが連れて行った事で離されたアリスの冷たくなった手。
あの状態のアリスが生きるには吸血鬼になるしか方法はないだろう。
つまりこんな状況になっているのは僕だけじゃない。
ミカ
「…っ」
震える手でクルルの腕を掴み口をつけた。
泣きながら血を飲み込む。
クルル
「あなたはもう私から離れられないわね」
口に広がる血の味。
クルルの言葉が気にならない程、僕はその味に夢中になっていた。
クルル
「あは、永劫にあなたは私の犬になるのよ…」
そんな僕を見てクルルは楽しそうに笑う。
彼女が言った呪いのような言葉はちゃんと耳に入ったが、気にしなかった。
僕は犬になってでも生き延びる。
そしてアリスをあの吸血鬼から救い、今度こそ一緒に外へ行こう。
外に出たら優ちゃんを探す事もできる。
そう思い、百夜 ミカエラという人間の感情を殺した。