第12章 抗えない【R-18】
振り返るとそこには
緋色の双眸が、イリアのことを捉えていた。
「さっむいねー」
レオは微笑みながらイリアの隣に立ち、空を仰いだ。
「イリアちゃんってさ」
「?」
「この無数の星を見て…いろんなことわかっちゃうの?」
「……えっと、はい…」
「えーそうなんだ!今度俺も見てもらおっかな!」
レオの声は、わざとらしいくらい明るかった。
レオはその場に座り込む。
イリアも並んで座った。
「……イリアちゃん?」
「はい」
二人並んで、空を見ながら
目を合わさずに会話する。
「ジルと……うまくいってない?」」
「……!」
そもそも恋人同士になったことも秘密にしていたつもりだったため
レオの言葉にはいろんな意味で衝撃を受ける。
「何があったか、教えてもらえない?」
「……」
「言えば…楽になることもあるし、力になれることも、あるかもしれないから」
レオが、心の底から案じてくれている気持ちが
じんわりと伝わる。
「ジル様が…急な公務でお出になられたあの日」
「うん」
「一緒に出かける約束をしてました」
「うん…それはなんとなく分かってた」
レオは本当に察しがいい。
「つらかった、よね」
イリアは首を横に振る。
「その日、シドが部屋を訪れて」
「……あー」
「城下に…連れ出されました」
レオは事の顛末をまた察する。
「気付いたら、シドの部屋にいて」
「それってさ、もしかしたら…」
「?」
「気付いてるのかもね、ジルは」
「え?」
深夜、馬車で戻ったジルと
城下にいた二人が
すれ違った可能性がどれくらいなのかは測りかねたが
ジルの明らかに変わった態度を見るに
その可能性が否めないことを
レオは告げた。
「どう考えても約束破ったジルが悪いのに、その態度はおかしいもんね」
ジルはきっと
自分に裏切られたと
そう感じているのかもしれない。
そもそも
シドと共に過ごしてしまった時点で
(私……真っ黒…)
自分の汚さや醜さに
心がすさんでいくのを感じた。
「…で、シドとはどうなの?」