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【イケメン王宮】星の導きのままに。

第12章 抗えない【R-18】





昼過ぎに目覚めたイリアの耳には

微かな雨の音が聞こえていた。




「………」




様々なことがありすぎて

自分の気持ちが置いてけぼりになっている。



どこに置き去りにしてしまったのか

……よく思い出せない。



ベッドの上で横たわりながら

机の上に置かれた

空っぽのバスケットを


何も考えずに

ただ眺めていた。













数時間前。


「私が何も告げずに貴女との約束を破ってしまったのですから…悪いのは全て私です」

ジルの執務室。

机の前で書類に目を落としたまま
ジルは目の前に立つイリアに告げた。


「あの…ジル?」


「……ゆうべは、お一人で城下にでも行かれたのでしょうか」

朝方戻ったことを問いただしているのは一目瞭然だった。


「……はい、申し訳ありません」

「いえ、休日でしたから…貴女がどこでどう過ごそうと私は何も言う権利はありませんし…

それに私がそもそも、約束を守らなかったことが発端です」


「でも、急なご公務だと聞いていました。

仕方のないことだと知っていながら…勝手な行動を取ってしまいました」




ジルが顔を上げることは
一度もなかった。




理由の分からないもやもやした気持ちのまま

イリアは私室に戻り、眠りに就いた。














その日から

ジルの態度は豹変してしまった。



表向きは以前と変わらなかった。


紳士的であり
時に優しく
時に厳しく

完璧なまでに
「国王側近」としての役職をこなしていた。



イリアも
そのジルの仕事を、今まで通り手伝っていた。


だが
ジルが夜の星の観察で横に並んでくれることはなくなった。


「すみません、イリア…このところ、公務が立て込んでおりまして…先に休ませてもらいますね」


「いえ、いいんです」


イリアとジルは
最も近くにいながら

最も離れたところに在る存在に
なってしまったようだった。






時計塔の上で

一人、天球図を描くのも
すっかり慣れてきてしまった。





季節はすっかり変わり
空は冬の天球に変わり始めていた。



「わぁ……すごい眺め」


突然背後からする声に
イリアはびくりと肩を揺らした。


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