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【イケメン王宮】星の導きのままに。

第11章 すれ違い





時計が真夜中にさしかかった頃

さすがに酒場の客もまばらになり始めた。



王宮に仕えるようになってから
以前より飲酒量の減ったイリアは
確実に弱くなったのを感じていた。

(はー…シドと同じペースだとダメだ……)

「おい、そろそろ行くぞ」

意識が沈みそうになるのを何とかこらえているが
身体が言うことを聞いているのか聞いていないのか
あまりよく分からなくなっていた。


「あ?お前、つぶれてんじゃねーだろうな」

シドが肩を掴む感覚があるが、それに答えられない。

「……めんどくせぇな」

ぼそりと呟いたシドの表情は確認できない。


次の瞬間

身体がひょい、と浮く感覚と共に


温かいものに包まれた。


(あ…なんだろ……気持ちいい)


イリアはもう意識を握りしめることもままならず
その温かさに身をゆだねて目を閉じた。




抱きかかえた胸元にもたれかかるイリアを確認すると
シドは呆れながらも

少しだけ嬉しそうに

「……仕方ねぇな」

と呟いて店を後にした。






大通りは人気がなく静まり返っていた。

時折ふらつく酔っ払いや、馬車が静かに通り過ぎていったが
昼間のそれとは全く違う様子だった。


「……城まで送るのは、さすがにだりぃな」


シドはそのまま
自分の部屋までイリアを連れていった。








「……んん…」

気がつくとベッドの上に横たわっていたイリアは
見覚えのある光景に、はっとなった。

(ここ……シドの?)

飛び起きると、わずかに頭が痛む。



「よぉ、起きたか」

シドは水の入ったグラスを差し出した。

「……ありがと」

冷えた水が喉を通り、だるくなった身体を浄化してくれるようだった。

「今……何時?」
「あ?3時だけど」
「……帰んなきゃ」

頭を押さえながら起き上がろうとするイリアの腕を
シドはぱしっと掴んだ。

「おい、どこ行く気だ」
「どこって…王宮へ帰らないと」

「バカ、門閉まってるよ」
「……でも」

不安を滲ませたイリアの腕を
シドはそのまま引っ張ると

イリアの身体はそのままベッドに倒れこんだ。


見下ろすシドの顔は、無表情だった。




「行かせねえよ」




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