第11章 すれ違い
Jill side----
辺境の地で勃発した内乱の知らせは、未明に王宮に知らされた。
国王陛下が動けない以上
代理で動くのはいつもジルの役目だった。
陛下の次に権限を持つのはプリンセスだが
案件が案件なだけに、プリンセスを連れていくことは出来なかった。
(昼過ぎに戻れれば良いのですが…)
知らせればついて行くと言いかねないイリアには告げず
ジルは黙って辺境の地へ赴いた。
内乱といっても実際に大きな騒ぎがあったわけではなかったため、騎士団も数名のみ派遣して訪れたが
思ったよりも事態はこじれており
解決のめどが立つまではかなりの時間を要した。
(何も告げずにこのような時間になってしまい、イリアを傷つけてしまったでしょうか…)
一言、置き手紙だけでもすべきだったと
ジルは自分の行動を悔いた。
辺境の地を馬車で経つ頃には
日がかなり傾いていた。
「できれば急いでください」
御者に伝えると
ジルはいつもより揺れの大きい馬車に身を沈め
王宮で待つはずのイリアのことを思った。
やっと城下にさしかかったのは
すでに真夜中のことだった。
人気のない大通りを走らせていると
(あれは……?)
窓の外、ふと目をやると
見たことのある大柄な体躯の男が
ブルネットの髪の女性を抱きかかえていた。
(シドと……まさか…)
会いたいと思っていた、愛する人が
こんなところで、別の男に抱きかかえられている。
その飛躍した状況を
簡単に信じることは出来なかった。
違う。そんなわけない。
第一、スピードの出ている馬車から見た
一瞬の光景だ。
見間違いの可能性も十分にある。
……ブルネットの髪の女性は沢山いる。
でも。
ジルは嫌な予感がしてたまらなかった。
王宮に戻り
イリアの姿を確認するまで
ジルは安心することができなかった。