第11章 すれ違い
シドはそのままイリアを城下へ連れ出すと
すっかり日の落ちた夜の町を歩いた。
屋台や露店が点々と並び
まだ町は眠る様子がない。
馴染みの酒場へ向かうと
シドはカウンターに座り、酒を2つオーダーした。
「今日はお連れさんがいるのか…あれ?君、前にも?」
「あー…はい、お久しぶりです」
「なんか……雰囲気変わったね」
出された琥珀色のグラスを軽く合わせて、シドは一気にあおった。
「……宮仕えで色気が無くなったんだろ」
「何その言い方」
イリアは横目でシドを睨む。
バーテンは軽く笑った。
「いやいや…逆だよ……なんか前より色っぽくなったじゃん」
「えっ?!」
イリアは、反射的に紅潮した顔をバーテンに向ける。
「王宮はカッコいい人が沢山いて城下の女の子も騒いでるくらいだからね……いい人でもできたのかな?」
「あー…エロ官僚に食われたな」
「んなことないってば!」
意地悪な笑みを浮かべるシドの背中を、イリアはバシッと叩いた。
そんな二人を見てボソッとバーテンが呟く。
「なんか…二人もそれはそれでお似合いだけど」
「それはねぇ」
「それはないです」
返事のタイミングが完全にかぶり
3人は吹き出さずにはいられなかった。