第9章 別邸
アランは最初全く取り合わなかったものの、
レオとシドから説得され
プリンセス交流会で貴族を捕縛できたのがイリアの未来予知のおかげだということを知ると
ようやく重い腰を上げた。
「で……なんでアンタまで来てるわけ」
馬に乗れないイリアを後ろに乗せながら
アランは不満そうに言った。
「……アラン、相手は4人」
その言葉を聞き、アランは閉口する。
「短剣を持ってる人と、長剣の人が2人ずつ」
「………」
「建物の東側の窓から3人侵入、もう1人は別の方から入ったと思う」
廊下の中での出来事を思い出す。
「ユーリが…2人同時に相手してて…ハワード卿が1人応戦してる間に……もう1人……」
「もういい」
アランが止めた。
「え?」
「……大丈夫、中に入る前に全員捕える」
「アラン……」
「…お前が見た未来?絶対変えるから、安心しろ」
「ありがとう……」
日が西へ傾いていく。
「あの時の月の位置からして、時間はおそらく7時から8時頃」
アランは頷くと、後ろへ続く部下たちへ声をかける。
「少し急ぐ!日没までに別邸到着を目指せ!!」
「はい!」
「……つかまれ、落ちるなよ」
アランはそう告げると、一気に馬を加速させた。
かなり馬を飛ばしたものの
アランたちが別邸へたどり着いたのは7時をまわっていた。
(間違いない、ビジョンを見た時間とほぼ同じ)
確信したイリアはアランに告げる。
「アラン、もうすぐ侵入が始まる」
アランは黙って頷くと、部下たちに指示を下した。
「お前は後から来い」
「でも」
「俺を信じろ」
その場にイリアを残し、アランは別邸へと向かっていった。
(……きっと、大丈夫だよね)
あの時見た景色とは違い
目の前には色のある景色が広がり
空には星が輝いていた。
「いたぞ!捕えろ!!」
「そっちに2人いる、急げ!!中に入れるな!」
遠くから騎士団の声がする。
たまらなくなり、イリアは走り出した。
(ジル様……どうか、ご無事で!!)
祈りながら走ると、そこにはアラン率いる騎士団たちが賊を捕縛したところだった。
屋敷からジルとハワード卿が現れた。
「いったい何があったというのです」
ジルは困惑したように言った。