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【イケメン王宮】星の導きのままに。

第1章 夜【R-18】 






深夜、星を見るのは

星詠み師であるイリアの習慣でもあった。



先にシャワーを浴び終わり、

シドの浴びるシャワーの音を遠くで聴きながら


イリアは夜空を見上げる。




(……自分自身のことはあまりよく見えないけど)




一際眩しく輝く星のそばに、赤みを帯びた星が寄り添う。



(……これから、良くも悪くも何かが『動く』)




空はいつも教えてくれる。


良いことも悪いことも。





ただそれは

「大惨事」を「小競り合い」程度におさめることはできても

まったく真逆の出来事に変えることはできない。



それが「視えて」しまうことに

時折辟易してしまうこともあるが



シドとこうしてたまに会えるのなら

悪くないのかな…とも思う。






「なんか見えんのか」

いつの間にかシャワーの音はやみ、

背後のベッドからシドが声をかけてくる。



「うん…なぁんか、いろいろありそうで」

イリアは苦笑しながら振り返る。

「それは…お前に?」

「うーん、そうかな」

シドの隣に腰かけたイリアは、シドが手に持つグラスに視線を落とす。

「…まだ飲むの?」

「んなわけねぇだろ、水だ」

イリアは黙ってにやりと笑むと、そのグラスを奪って一口飲んだ。

本当に水だ。

予想を外し意を突かれた顔のイリアからグラスを奪い返し、シドはぽんと頭に手をやる。



「…たまにはゆっくり寝ていけ」


(そんなわけには…行かないんだよね)


イリアは曖昧な笑みを浮かべてベッドにねそべった。

「少しだけ休ませて」


「…少しだけ、ね」




シドが目覚めるときに、隣にいないように

イリアは必ずシドより先に目覚めて部屋を後にしていた。



俺と寝た女で俺より先に目覚めて去る女はお前だけだ、と

シドはいつも言うけれど



そうでもしないと

この距離を保てない。



目覚めた後に

意識のあるシドと顔を合わせることが

イリアにとっては怖かった。



そこから先の時間は

「本当の恋人」にしか許されない時間のような気がして。



そこから先の時間に行ってしまったら

自分の気持ちが加速してしまう気がして。




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