第1章 夜【R-18】
Sid side----
酒が早く抜けるように水を多めに煽ったつもりだったが。
「……ちっ。また負けたな」
日が完全に東に昇った、まだ早い時間。
すでにシドの傍らはからっぽだった。
「…ったく、逃げ足の早え女だ」
抱いた女が、朝、無防備な顔で寝ているところを見るのが
シドはたまらなく好きだった。
それは抱いている瞬間以上に
征服欲を満たしてくれるから。
そして
名残惜しそうにけだるそうに引き留める女を
意地悪な笑みを残して置いて行くのが
シドの一番「感じる」やり方だから。
「………」
二度寝を試みるも、妙に冴えてしまった目をうっすら開けながら、シーツの乱れた隣の空間を見つめる。
一人の女に肩入れするのは性に合わねぇ。
あくまでイリアは取引相手。
情報源の一つ。
報酬の代わりに、酒をおごって夜に付き合うこともある。
ただ、それだけの関係だ。
それだけ。
「……ふ…」
シドの顔に自嘲の笑みが浮かぶ。
「一体誰に……言い聞かせてんだ」
シドは天井を仰ぎ
そのまま目を閉じた。
いつもの部屋には無い
少し甘い、澄んだ残り香が
シドの身体を包んでいるようだった。