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【イケメン王宮】星の導きのままに。

第8章 休暇



本格的な夏を迎えたウィスタリアの城下には

強い日差しが降り注いでいた。



イリアはノースリーブのフリルブラウスに
カーキのフレアスカートを。

ブルネットの髪は
シンプルな黒のピンで一つにまとめ上げていた。

おくれ毛が時折
ふわりと白い首筋を撫でている。



ジルは王宮での装いとはまったく違い
グレーのシャツを少しボタンを開けてラフに着こなしていた。


いつもと違うジルの格好に
イリアは余計にどきどきしていた。

しかし

(久しぶりの城下…なんだかワクワクしちゃうな)



以前は当たり前のように訪れていた街並みが
今では
懐かしさと楽しさが入り交ざった、特別な場所へ変わっている。


「イリア、どこへ行きましょうか?」


「はい、えっと……」


歩いている先には市場が見える。


「市場へ行きませんか?」

「いいですよ」


揺れるシャツの胸元がいつもと違うジルの表情を作っていた。






「いらっしゃい、ネープルズ産の果物が美味しいよ」

市場は昼過ぎだというのに活気に溢れていた。


果物の並ぶ露店にさしかかると、店主が声をかけてきた。

「あれ、もしかしてイリアちゃん?」

「あー!おじさん久しぶり!!」

顔見知りの店主に思わずイリアは顔をほころばせた。

「最近鑑定やってないじゃん、どうしたの」

「あ、うん、ちょっとね…ネープルズのフルーツ?」

イリアはとっさに話を変える。

「今年はいつもより甘いよ。食べてみるかい」
「うん!」

店主はその場でオレンジの皮をむき、イリアとジルの分を渡してくれた。

「わ、ほんとだ!!すっごく甘い!!」
「だろう?」
「これは確かに甘いですね…」

ジルも感心しながら味わっている。

「おいイリア、いつものあるぞ?」

店主は意味深なウインクをイリアに送る。

ジルが怪訝そうな顔をしていると

「あ……じゃあ、ちょっとだけ…」

イリアは気まずそうな顔をジルに向けた。

「そっちのお兄さんもやるかい?」
「??」

首をかしげるジルに

「うん、少し、ね!」

イリアはさえぎるように答えた。


店主は奥に引っ込むと、グラスを二つ持ってきてくれた。

薄い黄色の飲み物が入っている。





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