第8章 休暇
アランにとっておきの場所を教えてもらった翌日
イリアはいつものように昼前に目覚め
朝食…他の者にとっての昼食をとりに
食堂へ降りてきた。
本来ならば、メイドや使用人たちと同じ扱いのはずのイリアだったが
ジルの命によって、プリンセスや側近、官僚や来賓も利用する食堂での食事を許されていた。
(テーブルマナーもあんまり得意じゃないから…まだまだ慣れないなぁ…)
さすがにプリンセスや貴族たちと同じ時間帯には居られないので
いつも遅い時間帯に訪れているのだった。
そうすると……
「おはようございます、イリア」
必ず、ジルに会えるのだった。
「おはようございます、ジル様」
緊張してしまうものの、どうしても会いたくなってしまう。
ジルの深紫の瞳を見て、イリアはそう思った。
正面に座ったジルが突然切り出した。
「突然ですが、今日は公務も一段落していますので休暇を差し上げたいと思うのですが」
「えっ!お休みってことですか?」
そもそも休みというものがあることを知らなかったイリアは驚きを隠せずにいる。
(でも…休みって何したらいいのかな。城下に行ったりしてもいいものなのかな…)
いろいろ思案していると
「……そこで、提案があるのですが」
遠慮がちにジルが切り出す。
「は、はい」
「イリアさえよければ、一緒に城下へ出かけませんか?」
「……えっ?!えっと、ジル様と、ですか?!」
「はい」
「いいんですか?」
「はい…私も休みを取りますので」
顔がほころんでいくのを止めることが出来ない。
「……嬉しいです!どこに行きましょうか!」
ジルは優しく微笑みをたたえながら答える。
「貴女の行きたいところ、どこでも付き合いましょう」
久しぶりの城下、それもジル様と並んで歩く日が来るなんて…
イリアは天にも登る思いがした。