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【イケメン王宮】星の導きのままに。

第7章 宮廷星詠み師




「で、どこで見るつもりだったわけ?」

アランはイリアの顔をまっすぐ見つめる。


「あ、えーっと…庭のすみっこなら…ばれないかなぁと思って」

「……お前、正直すぎ」

呆れたようにため息をつくと
アランはイリアの手首を掴んだまま、庭の隅とは反対の方向へ歩き出した。

「え、えっと…アラン様?」

「アラン、でいい」

「あ、はい…」

「敬語もやめろ」

「あ、は…じゃなくて…」

しどろもどろになるイリアをひっぱり、アランはそのままつかつかと歩いて行く。

「ど、どこへ行くの?」

「……とりあえず来いって」

その手に抗うこともできず、イリアは素直にアランについていくことにした。





アランと共にたどり着いたのは、厩舎の隣にある馬術訓練用の広場だった。

「わぁ、広い」

「こっちの方がよく見えんだろ」

「アランさ…じゃなくて、アラン…いいの?」

アランの顔を見上げると、アランはイリアとは目を合わせずに答えた。

「ここは騎士の宿舎に近いから見回りも来ねえし、見晴らしがいいから危なくねーだろ」

「ありがとう…アラン」

するとアランは何も言わずに背を向けて去っていってしまった。

(ちょっと怖い人かと思ったけど…優しいんだ)

アランの緋色の瞳は
どこかでみたことのあるような気がしたものの

イリアはアランの助言通り
馬術訓練用の広場で思い切り大の字になって寝そべった。


「はぁーーー!!!」


大きな深呼吸と共に、大きな声が出てしまう。

しかし近くにあるのは厩舎だけなので、イリアはあまり気にせずに伸びをした。


(星が届きそう)


短く刈られ手入れのされた芝が、ドレス越しに背中をくすぐる。

地面に身体が接すると
自分が自分に還れる気がした。

王宮とか
立場とか

仕事とか

いろんなことが

小さく感じる。



ただただ自分の身体に触れる
風の感覚や

瞳に映る星

全てが
イリアの生きる世界だ。


(城下でも、王宮でも…空はつながっているし大地もつながっているから)

目を閉じながら思う。



(ジル様…)

手の届かない存在だということは重々承知でも
こうして毎日姿が見られるだけで


城下にいる時とは、違う。
違う世界にいるのだ。


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