第7章 宮廷星詠み師
星詠み師としての活動は主に夜が勝負だ。
明け方までの星の動きを詠むことは
星詠み師には欠かせないことだった。
そのため
「秘書」という名目でありながら
イリアは昼過ぎから職務に就き
ジルのサポートを終えてから
夜、星の観察をして、明け方休む、という生活を許されていた。
「星を見るにはここが一番良いでしょう」
ジルは、あまり人の来ない時計塔の上に案内してくれた。
そこからの眺めは、空が綺麗にドーム型に観察ができ
城下でよく観察に訪れていた丘と同じくらい良い眺めだった。
たいていは時計塔の上で観察をしていたイリアだったが
今夜はどうしても地面に寝そべりたい気分だった。
星を詠む、というよりは
星を眺めてのんびりしたかったのかも知れない。
(庭の外れの方なら、見つからないかな)
イリアは見回りの騎士に見つからないように
そっと部屋を抜け出し、庭へと歩き出した。
夜の庭はしんと静まり返っていた。
振り返ると、城もほとんど明りが灯っていない。
空には星がたくさんまたたいており
暗い庭の中からはその星たちが今にも落ちてきそうに感じる。
(うわぁ……きれい…)
純粋な気持ちで空を仰ぎながら歩いていると
「おい、誰だ」
突然呼び止める声がした。
「えっ!」
びくりと肩を揺らし振り返ると
明りを腰に下げている騎士が、剣の塚に手をかけているところだった。
「わ!ごめんなさい!!」
「…女?」
騎士は剣から手を離し、明りを向けてきた。
「……お前、ジルの秘書の」
「…すみません……アラン様」
アランは警戒を解き、イリアのもとへ近づく。
「こんなとこで何やってんだよ」
「あ、えーっと……星を、見るために」
「は?星?」
アランは眉根をよせて、あからさまに嫌悪感を出す。
「……ここは王宮なんだ、そんなの夜中にいちいち許可できねーよ」
「ん、で、ですよね……すみません」
今夜は諦めよう、と肩を落としてそのまま去ろうとすると、アランはイリアの手首を掴んだ。
「えっ」