第6章 王宮へ【R-18】
次に目を覚ますと
開け放たれた窓から雨が吹き込んでいた。
カーテンが濡れている。
(うわ…やっちゃった……)
目覚めたばかりのふらふらした体で
よろめきながら窓を閉めた。
「はぁ………」
時計は夜中の3時。
もう一度眠るかどうしようか迷っていると
ガタンッッ!!
玄関で大きな物音がした。
「えっ!!」
驚きのあまり体がすくんだ。
(な、なに……?)
イリアが玄関にそっと近づき、
おそるおそる扉を開けると
「……シド!」
目の前の壁にもたれかかりうずくまるシドは
少しだけ顔を上げた。
「………よぉ」
左頬にアザができている。
雨に打たれたのか、全身びしょ濡れだ。
このアザは
誰につけられたのだろうか。
夕方一緒に歩いていた女性はどうなったのだろうか。
ただ、今は
あれだけプライドの高いシドが
自分の目の前でこの醜態を晒していることが
ひどく不憫に思えてしまった。
「…シド」
しゃがみこんで、シドと同じ目線の高さに合わせる。
深い青の前髪をかき上げると、
虚ろな目がのぞいた。
「……お茶、淹れようか」
一番ガラにない飲み物をすすめられ、
シドは自嘲の笑みを浮かべた。
キッチンでお湯を沸かしていると
シドは後ろからイリアのことを抱きしめた。
濡れた服や髪が冷たく触れる。
「……ケガ、平気?」
「あぁ、大したことない…」
何があったかを詳しく聞く気にはなれなかった。
脳裏に、夕方見かけた女性のことがよぎる。
「……シャワー、使っていいよ」
シドの、抱きとめる腕がピタリと止まった。
「……なぁ」
「え?」
「火……止めろ」
シドの言葉の意図が分からないまま、やかんの火を止めると
「…っきゃ!!」
シドが一気にイリアの体を抱きかかえる。
「え、何なに??」
シドは目も合わせずにまっすぐバスルームへ向かう。
脱衣所で抱えていたイリアを下ろすと、目の前で濡れたシャツを脱ぎ始めた。
「え」
ベルトの金属音が響き、イリアが戸惑っていると、シドの手がイリアの肩にかかる。
「や、なに??」
「………」