第5章 再会
Normal side----
ひと月もの間、ずっと空の中で探していた
深紫の双眸が
自分に微笑みを向けてくれている。
それだけで
イリアの胸の鼓動は、うるさく騒いで止まらなかった。
「シドと知り合いだったのですね」
運ばれてきた料理を食べながら、ジルが言った。
「はい…城下で鑑定をしたり、様々な人と接することが多いので…協力できる範囲で情報提供を」
「そうですか」
シドも、言葉遣いの割には上品に食べるなぁと思っていたが、ジルも負けず劣らず美しい所作で食事を進めていく。
「イリアさんは…」
「はい」
「あの時、選定会にいらしていましたが…」
「あ…はい……」
「プリンセスに、なりたかったのですか?」
(…恥ずかしい質問…だなぁ…)
少し沈黙を置いて、イリアは少しずつ答える。
「……わかりません、でも」
「でも?」
「おこがましい答えですが、選ばれなくてよかったかな、と思っています」
「…そうですか」
ジルは小さく笑った。
「やっぱり私は…星を見て、人々の明るい未来に寄り添いたいから…」
グラスの中ではじける小さな泡が、夜空の星を連想させた。
「未来を大きく変えることはできなくても…大けがをかすり傷にすることはできます。そんな風に、これからも誰かの役に立ちたい…それに」
「それに?」
「……単純に、好きなんです、星が」
顔をあげてジルに視線を送ると、ジルの顔は少し紅潮しているように見えた。
お酒を飲みながら、星の話をしていると
ジルは優しい眼差しでイリアのことを見つめていた。
(ジル様も、少し酔ってらっしゃるのかな)
そして一方的にしゃべりすぎていた自分にはたと気付くと
「あ、ごめんなさい…私ってば星の話ばかりして」
「いえ……好きなことを話す貴女の顔は、とても美しいですよ」
その言葉に、心臓がどきりと飛び跳ねる。
(やっぱり……酔ってらっしゃるよね??)
「そろそろ、行きましょうか?」
「あ、はい…そうですね」
ジルはさりげなくイリアをエスコートする。
どぎまぎしながら、イリアはジルの手を取って部屋を後にした。