第4章 回避【R-18】
例のパーティから数日経ったある日
ジルの執務室にはシドが招かれていた。
「全て説明してください、シド」
余裕の笑みを見せるシドが答える。
「おいおい、誰のお陰でプリンセスが守れたと思ってんだ、まず言うことがあんだろ」
「……」
ジルは眉根を寄せ、しばし沈黙した後
「…ありがとうございました、シド。いえ、ロイド=グランディエ」
その名前を呼ばれて、今度はシドの方が眉根を寄せる。
「ちっ…ま、仕方ねえか。ロイドとして出席してたんだからな」
シドはパーティの会場で
プリンセスに近づく「緑の服の男」を見つけると
言いがかりをつける芝居をしてアランを呼び寄せ、プリンセスから引き離した。
別室へ連行すると、その男の懐から刃物が出てきた。
問い詰めると、プリンセスのことを狙ってのことだと白状したのである。
「最初っから全員調べりゃよかったんじゃねえの?」
「…それに関しては返す言葉もありません。今回の犯人の家は以前から交流があり、面識もあったので油断していました…」
ジルは自分の爪の甘さを悔やむかのように苦い顔を浮かべた。
「ま、どんな制度にも『反対派』ってもんは存在する…だからアランみてぇな奴とかが必要なんだろ?」
「そうですが…。ところで」
ジルは咳払いを一つすると、
自分のターンだと言わんばかりにシドをまっすぐ見つめ返した。
「シド、貴方は今回の件が起こることを事前に知っていたのではありませんか?」
「…だったらどうする」
シドの表情は相変わらず余裕をにじませている。
「だとしたら何故…あのような曖昧な表現をしたのでしょうか」
「依頼対象外だったからな。俺は情報屋だ、依頼された情報以外教える義理はねぇ」
「では何故、自ら赴いてまで今回の件を食い止めようとしたのですか」
シドの顔から余裕が消える。
沈黙の空間が広がる。
「……それが、『依頼』だったからだ」
「依頼?…貴方が直接赴いてでもプリンセスをお守りすることが?」
シドは視線をそらしたまま何も答えない。
「それは……誰の依頼ですか」
有無を言わせぬ鋭い視線が、シドに向けられる。