第4章 回避【R-18】
…その後
シドは何度もイリアを抱いた。
日がかなり高くなった頃
シャワーを浴びたシドは服を着替えて出かける支度をしていた。
イリアは仕事の後、星の観測をしてそのまま夜を明かしたため、体は限界に達していた。
シドはそれを察したのか
「適当に休んでろよ」
と告げて、ベッドに横たわりながら薄めを開けるイリアの頭を撫でた。
「王宮へ報告に行ってくる」
シドはおそらく、イリアの予知のこともうまく伝えてくれるのだろう。
「…部屋の、カギは」
「お前持ってろ、後で受け取りに行く」
シドはそのまま、振り返らずに部屋を出ていった。
(………)
考えたいことは山のようにあったが
イリアのまぶたは急速に重くなり、抗うことができずに意識を手放した。
その日の夜
通常公務を終えたジルは
昼間シドから渡された報告書に目を通しながら
三日後のパーティの招待客リストを照らし合わせ目を細めた。
(………引っ掛かりますね)
シドが突然
「国王の座に興味はねぇが、今回はロイドとしてこのパーティに参加する」
と言い出した。
グランディエ大公の意向かと問いただすも
「ま、たまにはな」
と曖昧に返され
挙句の果てには
「俺の調査対象以外で素性のわからねえ奴はいるか」
などと意味深なことまで聞いてきた。
(調査依頼した招待客以外に怪しい人間が?)
ジルが問いただしてもシドは曖昧に答えて帰ってしまった。
(一体どういうつもりでしょうか……)
眉根を寄せ、ジルはリストにペンを走らせる。
シドに調査を依頼しなかった数名の貴族は
皆、昔から交流のある由緒正しい家柄の人間で
ジルも面識のある者がほとんどであった。
そして、素行調査の報告書は
非の打ち所がない完璧なものだ。
(……怪しい人間が侵入する隙など、皆無に思えますが…)
翌朝一番に、ジルは当日の警備強化をアランに依頼することにした。
……結果として
ジルのこの判断と
シドのパーティ参加によって
最悪の事態は免れることになったのだった。