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【イケメン王宮】星の導きのままに。

第2章 プリンセス選定



自分がプリンセスに選ばれなかったことは

正直どうでもよかった。



イリア自身にもそれは分かり切っていたことだし

星の運命からは逃れられないことは

他でもない自分が一番よく知ることだった。


でも

なぜだろう。



深い紫のあの双眸と

もう二度と目線を交えることがないのかと思うと


胸の奥に僅かな苦みのような

焦げ付いたような違和感を感じるのだった。



忙しそうにプリンセスと話しこみ

まったく声をかける隙の無いジルに

どうしていいか分からず、ただイリアはその場で

茫然としてしまっていた。



「すみません、速やかにご退出ください」

係の人らしき男性に声をかけられはっとなったイリアは

いつまでも未練がましくその場にたたずんでいたことが急に恥ずかしくなり

「あ、す…すみません」

と、紅潮した顔を俯かせて足早に大広間を去ったのだった。





(…バカみたい、物欲しそうに見つめちゃって)

ジルはこちらのことなど気にも留めていなかったが

それでもイリアは気恥ずかしさで胸がいっぱいだった。



(ジル様…最後にもう一度だけお話したかったけれど、所詮住む世界の違う人…)


さきほど中庭に面した廊下で突然見えた白黒のビジョン

あれはイリアがたまに見ることのある未来予知だった。


母親ほどではないが

イリアもたまにあのように予知をすることがあるのだ。


(二度と…会うこともないんだろうな)




俯きながら早足で歩いていると


「……おい」


急に呼び止められ、イリアはびくりと肩を揺らした。


「……何やってんだ、お前」


聞き覚えのある、低い声。


おそるおそる目線を上げると、見慣れた顔がそこにあった。




「シド!」

「よぉ」


シドはイリアの様子を見るなり、事情を察すると目を細めせせら笑った。

「落選プリンセス」

「う、うるさいな…」

特別派手ではないものの
普段絶対に着ないような淡い色のミモレ丈のドレスに、

きちんと結いあげた髪。

シドは見るなり、その髪をくしゃりと乱す。



「ちょっと!やめてよ」


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