第16章 婚姻式
ユーリは残りの箱から出した
パールの装飾のされたネックレスにイヤリング
ドレスと同じシルクのグローブを
丁寧にイリアにつけた。
そして慣れた手つきでイリアの髪をまとめ上げると
「イリアさんは星詠み師だから、これが似合うと思って」
頭に、星の形の装飾がついた
ヘッドサークレットを乗せた。
そして
「最後は…これ」
裾に薔薇の縁取り刺繍が施された
マリアヴェールをかぶせた。
「………」
鏡に映る自分の姿に
イリアは言葉を失った。
「…イリアさん、女神さまみたい」
ユーリが鏡越しに、微笑みながら言った。
「………ユーリ、これ」
鏡からユーリが姿を消し
イリアははっとなって振り返ると
「……お手をどうぞ」
扉の前で、手を差し伸べて待っていてくれた。
「…この格好で、表に出るの?」
ユーリは黙って笑顔でうなづいた。
ユーリに連れられてやってきたのは
後片付けの終わった庭だった。
いつもは薄暗い庭が
今日はいたるところに明りが灯され
庭全体がほんのり明るくなっている。
昼間咲き誇っている花々は
少し控えめにその姿を見せていた。
「足元、気をつけてね」
ユーリに誘導されて
イリアはドレスの裾を踏まないようにゆっくり進んだ。
次の角を曲がると
庭の中央部の広場まで続く、大きな一本道だ。
そこまでさしかかり
ユーリは手を離した。
「……おめでとう、イリアさん」
優しい笑顔のユーリから離れ
イリアは角を曲がり
立ち尽くしてしまった。
ひときわ明るく照らされたその一本道には
レオ、アラン、それにプリンセスとルイまで並んで立っていた。
「……」
言葉を失う。
(ウソだよね…夢だよね…)
そして
最奥……真ん中には
白とパープルの差し色の入った礼服に身を包んだ
ジルが立っていた。
ジルは一瞬
イリアの姿を見て目を見開いたが
すっと細め穏やかに微笑むと
「こちらへ」と言うかのように
手を差し出した。
皆が見守る前をゆっくりと歩き
イリアはジルの前に立った。