第15章 王宮会議
(…おばあちゃん)
マダム・シャルロットはイリアの祖母の名だ。
「ネープルズが正式に認めたとなると…」
「し、しかし他国は他国…!」
「いいのかよ…」
シドは羊皮紙をひらひらさせながら、せせら笑った。
「国王陛下がここまでしてるのに、それを無視して
マダム・シャルロットの孫娘を…国家反逆罪なんかにしてみろ。
……戦争になるぞ?」
シドの目は笑っていなかった。
官僚たちは息を飲む。
「最終的な全ての判断は」
ざわめく会議室に響く声。
……柔らかく、芯の通った
美しい声だった。
「国政のあらゆる最終的な判断は、ルイと私で行います」
プリンセスが立ちあがって、官僚たちに向かって告げた。
「もちろんこれまで通り、官僚の皆さまにも助けて頂くつもりです。
ルイと私だけでは…ウィスタリアを守れません。
…だから、沢山の人に力を貸しいてほしいのです。
イリアも…その一人として認めて頂けませんか」
プリンセスのその言葉に反論する者は
誰ひとりいなかった。
長い長い会議が終わり
議場は解散となった。
座り続けていたイリアは
ほっと胸をなで下ろし、ざわめく会場を見まわした。
「怪我は治ったのか」
後ろから、声が降ってくる。
「シド…」
いつものせせら笑いを浮かべた
ミッドナイトブルーの瞳。
「……てか、貴族なんだね」
「あぁ…こう見えてな」
「ありがとう、シド」
まっすぐ向けられる榛色の瞳を
シドは受け止められずに目線をそらした。
「ま、国政に携わるんなら、いつでも依頼はうけるぜ?」
「…お返しできないけど?」
「あ?報酬がねえなら駄目だな」
答えがわかっていて、あえてシドが言っているのは丸分かりだ。
「イリア」
名前を呼ばれると
いまだに心臓がどきっとする。
「…何?」
「お前のばーさんからだ」
シドは1通の手紙を差し出した。
手紙を受け取り、中を見ようとするイリアに
「自分のことを大事にしながら星を詠めってよ」
シャルロットから預かった言葉を告げた。