第15章 王宮会議
「…おばあちゃんが?」
「ああ」
手紙に視線を落とし、読みふけるイリアを
穏やかな目で見つめてから
シドは黙ってその場を立ち去ろうとする。
それに気付いたイリアは
「シド」
「あ?…なんだよ」
「本当に……ありがとう」
振り返ったシドは一瞬だけ
とびきり優しい目の色をしていたが
意地悪な笑みをみせると、手をひらひらさせて
その場を去っていった。
シド。
もし、あなたと出会ってなかったら。
あなたと交わってなかったら。
あなたが、私を好きになってくれなかったら。
私は今ここにいない。
始まりのきっかけは
あなただったから。
ありがとう、シド。
本当に…。
イリアは
目頭にこみ上げるものを必死に抑えて
シドの大きな背中を
見送った。
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こうして
イリアは晴れて
正式に
ウィスタリアの宮廷星詠み師として
職位を賜ることになった。
……といっても現実的には
ジルの秘書という役職のままで
ルイやプリンセスが助言を求めた時だけ星を見ることにしていた。
それからまたたく間に
ルイの宣言式が行われ
王宮は慌ただしく
新しい夜明けの準備をしていたのだった。