第14章 誘拐
(………ん)
イリアが目を開けると
見知らぬ天井がそこにあった。
(ここは……)
あの忌まわしい男に監禁されていた部屋ではないことは明らかだった。
身体を起こそうと力を入れようとするも
あちこちに痛みが走る。
「……いっ……」
すると、腕の辺りに何かが当たる。
(?)
首だけをそちらに向けると
……そこには
一番会いたかった人の存在があった。
(ジル……)
ベッドの端に顔を伏せて眠るジルは
深紫の髪の隙間から
穏やかな寝顔を見せていた。
エドガーの屋敷での記憶が蘇る。
(助けに……来てくれた)
痛みをこらえながら上半身を起こし
そっとジルの髪を撫でた。
「あ……」
「………ん、イリア」
目を覚ましたジルは
イリアの姿を確認すると
ホッとしたように柔らかく微笑んだ。