第14章 誘拐
「は……はは……」
すべての計画が水の泡になったことを悟ったエドガーは
乾いた笑いを浮かべた。
ジルは剣をおさめ
縛られていた
イリアの手首と足の縄を解いた。
縄には血が滲んでいた。
眉根を寄せ不安そうな瞳のジルに
イリアは口角を僅かに上げた。
「大丈夫、です……約束は、守りました」
「……イリア?」
「……何も、されてません、から」
そう告げたと同時に
イリアは意識を失ってしまった。
「イリア!」
次の瞬間
屋敷の玄関口が騒がしくなり
ほどなくして
アランが部屋に駆けつけてきた。
「ジル…悪かった、こんなことになっちまって」
「アラン殿…」
アランの背後から駆けつけた他の騎士たちが
うずくまるエドガーを拘束する。
「怪我、してるのか…イリア」
ジルの抱きかかえるイリアに視線を落とし
アランは悔やむような顔をした。
「悪い…守ってやれなくて……」
意識のないイリアに
アランは届かぬ自責の念を告げる。
「アラン殿、私はこのままハワード卿の屋敷へイリアを連れてゆきます。エドガー伯爵のことはお願い致します」
「ああ、わかってる」
部屋をあとにしたアランを見送り
ジルは、ボロボロになったイリアを抱き上げた。