第2章 プリンセス選定
国中の独身女性に送られる
「プリンセス選定会」の招待状。
もちろん全員が来るわけではないが
それでも相当数の女性が
ウィスタリア王宮を訪れる。
女性とはいえ
外部の人間が多数出入りする特別な日だ。
王宮の警備は、自然といつもより緊張している。
たくさんの着飾った女性たちが王宮の正門から宮殿へと歩いて行く。
やたら華美な者もいれば、清楚にまとめた者もいるし
堂々と胸を張っている者もいれば、不安そうに肩を丸めている者もいる。
(…くだらねー)
どれも同じに見えてしまうアランにとって
今日ほど面倒くさく興味の湧かない日はなかった。
(プリンセスってやつに、どんだけ幻想抱いてんだよ)
何も知らずにただ「プリンセス」という肩書だけに憧れてやってきた女性たち。
アランにはまったく理解できない感情だった。
「そんなに怖い顔してたら、女の子たちが帰っちゃうよ?」
後ろから聞こえる声に、振り向かずにアランは答える。
「アンタにかんけーねぇだろ?」
銀髪に、アランと同じ緋色の瞳が背後で光る。
「うーん…みんなかわいい」
「おい、邪魔なんだけど」
アランの忠告は無視して、レオが続ける。
「みんなかわいいんけどなぁ…なんかぱっとしない」
「アンタが選ぶんじゃないだろ」
「そう、ジルが選ぶ。でもジルは俺より見る目厳しいから…」
去年も、そのまた前も、プリンセスにふさわしい逸材がおらず解散になったことを思い出す。
「今年も、解散かな~??」
「だから……邪魔だって」
冷やかなアランの視線が向けられ、レオはやっと背を向ける。
「はいはい、戻りますよ」
「……」
戻ろうとするレオは、宮殿へ向かう女性たちの中の一人に視線を奪われる。
(…あれ)
ブルネットの髪。まとめられているが、どこかで見たような雰囲気だ。
(デートしたことある子だったかな…)
一度デートした子の顔は忘れないレオだったが、思い当たらない。
(うーん…どこかで)
一瞬、榛色の瞳がレオに向けられたが、すぐに戻され消えていってしまった。
少し後ろ髪を引かれる思いを残しつつも、レオはそのまま宮殿へ戻った。