第10章 謹慎 1
村人の気配がなくなったにもかかわらず光秀はまだ萩の腰を抱き寄せている
萩「光秀さん説明してくれますか?」
光秀「この村で不穏な動きがあって潜入調査をする事になったのだ
だが、信長様にお前の面倒を押し付けられ
仕方なくお前を妻役にしたまでだ」
萩「事情はよく分かりました。人前で妻を演じればいいのですよね?」
光秀「ああそうだ」
萩「今は誰も居ないですよ?離して下さい」
光秀「少しは慣れた方がいいかと思ったのだが仕方ない」
ニヤッと笑うと離れて部屋に荷物を下ろす
光秀「俺は偵察に行ってくるお前は好きに過ごしいろ
誰か来たら俺は仕事に行ったと言え」
萩「分かった、いってらっしゃい太郎さん」
にっこり微笑み見送った
一刻程家で過ごしていると入口の戸がトントンッと叩かれた
萩「はい。どちら様ですか?」
娘「えっ!?ここは太郎さんの家ですよね?」
萩「そうですが、貴方は?」
娘「私はこの家の管理をしている者の娘です
貴方こそ太郎さんの何なの!?」
萩「私は太郎さんの妻、桜と言います。
私の太郎さんに何か御用ですか?」
娘は目を見開き固まった
娘「つ、つま?太郎さんの?」
萩「ええ、妻です」
にっこり微笑むと娘はよろよろとよろけながら帰って行った
萩「あの子光秀さんのこと好きなのかな?
見た目はイケメンでも中身があれじゃあねー」
一人呟きながら戸を閉めた
光秀「中身があれとは何だ?」
萩「きゃ!み、光秀さん何時帰って来たんですか?」
光秀「そうだな『私の太郎さんに』あたりからだ」
萩「聞いてたんですか」
光秀「で、中身があれとは何だ?」
萩「えっ!大した事じゃ・・・」
目を泳がせてしどろもどろに答える
光秀「『お前の太郎』が聞いてるんだ答えろ」
ニヤニヤ笑いながら抱き寄せ顎に手をかけ瞳をのぞき込む
萩「あれは演技です人前では妻でいろって言ったから//」
光秀「では、慣れる為に二人の時も妻を演じてもらおうか
妻なら疲れて帰って来た夫を笑顔で出迎えろ」
萩「お、おかえりなさいませ//」
顔を赤く染めながら微笑んだ