第25章 小谷城 6日目
長政「痺れる?」
萩「ええ、それはもう素晴らしい甘味でした」
長政「八重、いつの間にそのような甘味を手に入れたのだ?」
八重「それは・・・その・・・」
萩「長政様。」
長政「どうしました萩姫?」
萩「私、八重姫に御礼をと思いまして準備いたしました」
八重「・・・・・おれい?」
はいと返事をして萩はにっこり微笑みを浮かべた
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お菊「このような場所に連れて来て何をするおつもりなのでしょう?」
八重ははじめてお城にある訓練場に足を踏み入れた
壁には練習用に使う木刀や槍などが綺麗に整理されている
八重「・・・・・・・」
萩「お待たせいたしました」
八重「!?」
着替えをすませ入り口から入って来た萩を見てその美しさに目を見開いた
萩が着ていたのはこの時代にはないデザインだった昨日反物屋をまわって異国から仕入れたと話す店の主人からレースと透き通った布を買い
持っていた着物をアレンジして自ら仕立てたものだ
真っ赤な着物の上半身は袖を切り落としノースリーブにし襟元にはレースを縫い込んだ
腰には細さを強調する為に袖で作ったリボンで蝶結びをした
裾に向かってギャザーが入り動けばヒラヒラ揺れる
前は膝丈だが後ろに側に向かって行くにつれて長くなっている
肩には透き通った布をかけてた
長政「美しい・・・」
シャンシャンと何処からともなく鈴の音が鳴り響いた
鈴の音に合わせ萩が剣舞を始める
羽衣と栗色の髪がふわりふわりと揺れ動く
八重に向かって妖艶に微笑みを浮かべれば引き寄せられるように萩の元へと足を進めて行く
萩「八重姫、なぜ私がこの色の着物にしたかわかる?」
そばにやって来た八重の頬を指先で軽く撫でる
八重「いいえ・・・」
萩「返り血が分からないようにする為・・・」
耳のもとで囁けば血の気がうせ真っ青になり小刻みに震えだす
萩「震えてるの?傷つけたりはしない・・・でもね
菻が受けた苦しみはこのくらいじゃ足りないわよ?
それ相応の報いは受けてもらう」