第2章 木の葉
週末の夕間暮れ。仕事終わりで家に帰る人が行き交う木の葉の雑踏を、肩を並べて歩く三人がいる。
シカマル、いの、チョウジ、十班のメンバーだ。
「寒くなって来たねぇ。寒くなると食べ物の匂いが変わるからすぐわかるんだ」
鼻をくすんと鳴らしてチョウジがニコッとする。幸せそうないい顔だ。
「焼いたり煮たりした匂いが強くなるんだよ。火の匂いみたいな?ほら、ストーブとか焚き火っぽい感じ」
「……へえ。ポエマー」
キツく眉根を寄せたいのが素っ気ない声を出す。少々お憤りの様子。
察したシカマルは苦笑いした。
「また目方気にしてんのか。無駄だから止めとけって。何だかんだで食っちまうんだからよ」
「大体何でそんなに気にすんの?大丈夫、いの痩せてるから。痩せてるってより痩せ過ぎ?もっと食べた方がいいよ」
「うるさい!自分で満足出来なきゃ太ってることにも痩せてることにもなんないのよ!何にもわかってないクセに知ったクチ聞くんじゃない!あーッムカつくッ!」
鬼の形相で自慢の髪を振り乱すいのに、シカマルは溜め息をついた。
「……目方気にし出すとすぐそうなっからメンドくせんだよ、オメェは。黙って太ってろ」
「今太ってるってった⁉」
「太ってろっつったんだよ。食うもの食わねえと耳まで遠くなんのか?」
「パンの耳なんか食べないっての!」
「何訳わかんねえ事言ってんだオメェは。栄養不足で幻聴かましてんのか?ダイエットしたきゃ補聴器つけろ。周りに迷惑だ。いきなり耄碌しやがってメンドくせんだよ、マジで」
「耄碌⁉縁側でホゲホゲ将棋指してるじっつぁまにそんな事言われる筋合いないわよッ!何でもかんでもメンドーメンドーって剣道か!クロガネか!お前の最弱を以てアタシを痩せさせてみろ、さあ来い!」
「…どっかの誰かみてェなつっまんねぇ事言いやがって、バカかオメェは」
「つまんなくありませんー。クロガネは面白いんですぅー」
「ムカつくな……。汐田を思い出すぞ。お前重症だ。もう帰れ。帰って木の根っこでもしゃぶって寝ろ」
「何で木の根っこなんかしゃぶんなきゃないのよ⁉山の熊だってもっといいモン食べてるわ、今時分!」
「そのいいモンを食いたくねんだろ?太るから。じゃ、しょうがねぇじゃねえかよ」
「熊も食べないものを食べなきゃなんないなんて…。いの可哀想……」