第1章 拾い物
チャリとまた金属音が耳に届き、背中へ寄りかかった女の鳩尾辺りに硬い違和感を感じる。
ゴツいもんつけとるな。
麓に着くまでに擦れて傷がつきそうだ。自分にも、女にも。
仕方なく一度下ろして女の首を覆う徳利首に手をかけた。
「ありゃ、何をする!やめんか、おいおい!」
「うわッ、エロ仙人、駄目だぞ、病人にまで手ェだしたらよ!エロも大概にしろ!サイテーだってばよ!」
泡を食って口々に喚く爺とナルトに自来也は厭な顔をする。
「勘違いするな、バカ!背負うに邪魔なものが…」
徳利首を引き下げた自来也が口を噤んだ。女の首に巻かれた包帯に眉をひそめる。
首元に鈍色の鎖と、それに連なる武骨な指輪がある。
…これか。
指をかけようとして、手首を掴まれた。
女の目が自来也を見上げている。心なし先刻より黒目勝ち、瞳孔が開いているように見えた。
「それに触らないで下さい。絶対に」
きつい声で漏らして、また目を閉じる。
「……大事なもんか。そらすまなんだのう」
自来也は女の手をそっと外して襟を戻した。
「へへ、怒られてやんの。ザマミロ…あだ…ッ」
嬉しそうに笑って頭の後ろで手を組んだナルトをパカンとはたいて、自来也は再び女を背中に担ぎ上げた。
「しょうがねェ。何日か籠もってシゴイてやるつもりじゃったが、予定変更じゃ。里に戻るぞ」
「やたッ!一楽行こうぜ、一楽!じいちゃんラーメン好きか?一楽のラーメンってばサイコーなんだぞ!あー、ハラ減った!早く行こうぜ!」
爺の手を引っ張ってナルトがウキウキと言う。手を取られて一瞬嬉しそうに顔を弛めた爺は、すぐにハッと口を引き結んだ。
「里とは何処の事だえ?」
聞かれて自来也の後を追いかけていたナルトがきょとんと振り返る。
「何処って、木の葉だよ。木の葉の里に行くんだってばよ!」