第6章 空の青さを知れど海の蒼さを知らず
自来也とナルトは迅速だった。
一楽で丁度おかわりしようとしていたナルトと伊草を捕まえ、反す刀でナルトにシカマルを連れてくるように言い付けると、一足先に伊草を連れ戻る。
程なく外で夕飯を済ませた態で本屋で立ち読みしていたシカマルを有無を言わせず、いや聞かず、ナルトが連行。
そうして綱手と波平の待つ執務室に一同が介した辺りで、ナルトと伊草を除く全員が異臭に気付いた。
「……おい、ナルト。お前ニンニク食ったな?」
しかめ面の自来也がナルトと伊草から一歩退いた。
「おう!とんこつにブガッて絞って食った。たまにゃとんこつも悪かねえよな。旨かったってばよ!」
無頓着に笑うナルトに自来也はますます顔をしかめる。
「丸まんまブガッて絞って食ったな?で、こっちのじいさんにも同じモン食わせたじゃろ?」
伊草が心なし血色の良くなった顔を自来也に向け、至極真面目に頷いた。
「面白い料理よな。ちと熱すぎで往生したが、美味しく頂いたえ」
自来也は堪えかねて鼻を摘み、目を三角にして声を高めた。
「臭えんじゃよ、二人とも!何でにんにく!?わざわざにんにく!?ナルト、お前、いっつもそんなの食わんじゃろ!?」
「だって伊草のじいちゃんが精つけたいってぇからさ」
「食うて力を付けとかんと、何をするにも先ず体力だぞな、もし」
「……くせぇな」
ナルトの隣で大人しく立っていたシカマルがボソッと洩らす。
卓に肘をついて手の甲に顎を載せていた綱手が苦笑を隠すように俯き、部屋の壁に背を預けて腕組みしていた波平が体を起こして窓へ歩み寄った。
「今時分精を付けたいなら大蒜より自然薯がよろしいでしょう。旬のものを摂った方が効果は大きい。それに大蒜より自然薯の方が周りにも親切というものです」
執務室の窓を開け広げて冷たい夜気を入れ、磯の影はまた壁際に戻った。
「林檎はないのですか、木の葉には」
「リンキン?」
聞き返したナルトに綱手が笑いながら答える。
「野生の林檎の事だ。リンゴではなく、リンキンという。まあ、言い分けるのは本草に煩い磯や草くらいなものだろうな」
「林檎には消臭効果があるよって」
伊草が真顔でナルトを見下ろした。
「それを食うて臭い消ししろと、そこな御仁はそう言われとるんだなえ。それだけわちらが臭うとるという話だえな。やれ、恥ずかしやの、ナルト」