第4章 未熟者
「未熟者はお嫌いですか」
穏やかに尋ねた波平を楽しげに眺め、綱手は肩を竦めた。
「何の、嫌いなものか。アタシ自身未熟者だし、何よりその未熟者にどやされてアタシは火影になったようなモンだからな」
「ほう。それは見事な未熟者がいたものです。どうした者か、興味深いですね」
五代目火影、蛞蝓綱手姫の心を動かした未熟者。
「今会わせてやる。何だかんだで師匠に頭が上がらんからな、すぐ現れようよ」
波平の目が細くなる。
「成る程、自来也殿のご師弟ですか。それはますます…面白いですね」
「ああ、面白いヤツだ。ただうるさくてな」
綱手は片目を瞑って波平を驚かせ、胸元を指先で手繰った。
万感の詰まった綱手の、五代目火影の護りのあった場所。今は飛び切り未熟な忍の首元に在る護りは、彼への綱手の信頼の証だ。
「いずれ火影になるなどと抜かす痴れ者だ。磯影のお前とはそのうち厭でも顔を合わすだろうから、今から見知っておくのは悪くないと思うぞ」