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連れ立って歩く 其の四 和合編 ー干柿鬼鮫ー

第3章 サソリ



傀儡が美しく在るのは目に見えぬ手間がその人型から匂い立つからだ。

傀儡の材には様々な種類があるが、矢張り木を使ったものが作り甲斐がある。

歯車には花梨、軸心に赤樫、胴は桜、顔は檜、動きの速さを調節する調速機に使うのは柘植や竹、黒檀。パーツによって使う材が細かく分かれる。

サソリは必要な材を自ら探して採取する。木を材にとるときは、買い求めたもので作る事をしない。一から気の入ったものでしか作業する気になれないからだ。七つ道具も手ずから拵えたものを使う。

これはチヨバアや父母を見ていて肌に染み付いた習慣だ。
木偶を作り続ける限り、恐らく生涯変わる事のない営み、体に馴染みきった面倒事。

気の入った材に練り込んだチャクラを注ぎ、強度を高め、手足以上に自在に操る。その変え難い歓びと強烈な恍惚感は腕に覚えのある傀儡使いなら誰でも味わった事のあるものだろう。

だがしかし、サソリは山歩きも木の採取も大嫌いだった。
そもそも大自然に何の興味もない。大体何でどれが自然だかわからないそこらへんの景色に大が付くのだ。どれが自然ってそこらへん全部が自然だから大が付くのだ、人も含めてと言われてもムッとする。じゃあ俺は何だ。言っちゃなんだが大不自然だ、俺自体。
自然保護と言われても意味がわからない。何でもかんでも野別まくなしに保護しろというのか?阿呆臭い。
星だの月だの太陽だの、木のざわめきも川のせせらぎも頬を撫でる優しい風だかも鬱陶しい。勝手に撫でるな、気色悪い。
大だか小だか知らないが、自然なんか何なら無くなればいいと思っている。そうなっても一向に困らない。いっそ清々する。
山のあなたの空が遠くても我泣き濡れて蟹と戯れてもトンネルを抜けたらそこが雪国でも春が曙でも丑三つ時でも、サソリにはてんでどうだっていいのだ。

ただ傀儡の材がその中に生息する事だけが自然を許している理由だ。木が自然の一部でなければ、緑など目に付き次第殲滅してやってもいい。サソリは除草剤など目じゃない劇薬を扱える。心任せな環境破壊に走ればペンペン草も残さない自信がある。

増してそこに気の合わない馬鹿がその大自然の一部の如く倒れているならば。

……ほっときゃ自然に還んだろ…正に自然な成り行きってヤツじゃねえか。
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