第2章 木の葉
けれど、敢えて波平はこの場を持った。
いざというときの一瞬の躊躇、紙一重の判断、果断の背を押す力加減。
その僅かな匙加減に賭けて、騒ぎ立てずに話を聞かざろう得ない木の葉の日常へ紛れ、不意を打つように牡蠣殻に己を映したのだ。
「磯辺は私に会いに来ると言った。その邪魔をしないでくれ」
波平はトンビの襟元を引き寄せて、また茫洋とした目を彷徨わせた。
「くれぐれも薬事場を頼みます」
言い残して踵を返した彼を見送って、アスマとカカシが苦い顔をした。
シカマルはトンビを翻す後ろ姿を見送って、胸の内で呟いた。
ー…会えりゃいいな。浮輪さん。
痛々しい。牡蠣殻が波平の元へ帰ってくれればと思う。藻裾までもが身近になく何故だが大蛇丸と居るという今、牡蠣殻が己の元へ姿を現すのは波平にとって更に増して願わずにいられない望みなのだろう。
例え彼女がビンゴブッカーだとしても。
紅に一言ふた言、波平の姿は店外に消えた。
シカマルは息を吐いてカカシの湯呑みから酒を煽った。
メンドくせぇな、たく……。