第1章 拾い物
山の奥で妙な二人連れを拾った。
坊主頭とひげ剃り跡が青々しい巨漢の爺と、板か煎餅布団のようにぺったりと倒れ込む連れらしき女。
爺は見るからに影の薄い連れに覆い被さり、泣きながら繰り言を吐き出している。
女は動かない。
…女だと思う。
わしの目に狂いはない筈だ。殊、女に関しては。
「おい、どうしたんじゃ?行き倒れか?」
声を掛けたらば爺の肩がビクッと跳ねた。
…何じゃ。訳ありか。
厳つい眉の下、落ち着きのない目に涙を溜めて爺が縋るように手を合わせた。
「た、助けてくれんかえ?」
助けろと言うのなら助けないでもないが、あまり気が進まない。
…ハゲ爺と板じゃのう…まあこの際ハゲ爺には目を瞑るにしても、せめて女がもうちょっとボンとかキュッとかプリッとかしてりゃやる気も出るんじゃが。
薄べったく横たわる板のような姿を見るにつけ、色々とやる気が失せる。
泣き濡れた爺の顔を見ると更に色々萎えて来る。
しょうがねえのう。
頭を掻いて、自来也は口をひん曲げた。
「怪我か?病か?わしゃ医者じゃねえぞ」
「そんな事は言われんでもわかるわえ。そこまでの期待はしやせんがな、もし」
意外に辛辣な口をきいて、爺は女の頭を抱え上げた。女の右頬に膏薬が見える。
「これを休ませる場所が欲しいのよ。金なら払うよって宿をとってくれんかえ?これ、後生じゃ。この通り」
深々と頭を下げた爺に、自来也は口元を掻いて眉をひそめた。
やっぱり訳ありか。メンドくせェのう…メンドくせェのは間に合ってんじゃが……
背後でガサガサと下生えが騒いだ。爺がハッと身構えるのを手で制して、苦笑いする。
「心配いらん」
「おらあぁ!!!いっぱい魚が捕れたってばよ!飯にしようぜ、エロ仙人!」
葉っぱや木っ端を体中に貼っ付けて勢い良く飛び出して来た自分の連れを見て、自来也は額に手を当てた。
「お前ホンットに喧しいのう。静かにしろ。病人がいる」
片手に魚を連ねた木の枝をぶら下げて、渦巻ナルトがきょとんと足を止める。
「ん?何だよ?病人って…あれ?」
爺と女に気付いて目をパチクリさせたナルトへ自来也はしかめ面を向けた。
「水を汲んで来い。飯は後じゃ」
「どうしたんだよ、こいつ?」
「わしに聞くな」
「?」
「わしも事情がわかんねんだっつのよ!いいから水じゃ、クソガキ!」