第14章 磯辺に鬼鮫 ー裏ー
「ば…ッ、まだ言うか、貴方は!だから何でそこまでして変な格好させたがんの!?普通にヤればいい事じゃない!?普通は駄目かい!?普通が一番て言うでしょ!?」
「普通が一番難しいとも言いますね」
「寝言が言いたきゃ寝て下さいよ」
「私は寝言なんか言いません」
「成る程。で、代わりに起きてる間中常に寝惚けて寝言みたいな事を言ってる訳ですか。つくづく厄介ですね、貴方という人は」
「…それ、あなたのことじゃないですかね」
「…ちょっと。さも気の毒そうに言わないで下さいよ。止めて下さい。私は寝言は寝て言います」
「そう言えば聞いた事ないですね、あなたの寝言」
「一緒にいる時間がありませんからね。当たり前です」
「落ちて死んだように寝てるところや、表や木の上で動物みたいに寝てるところは何度か見かけてますが」
「…そういうレアケースを持ち出して人の事を兎や角言っちゃいけません」
「普通に寝てるあなたを想像出来ないのが凄い」
「そりゃお互い様です。目を開けて動き回りながら寝てそうですよ、干柿さんは」
「例によって下らない事言いますね。普通に寝ますよ、勿論。但し、私も誰かと共寝した事はありません」
「へえ?サクランボですか、干柿さん。まあ凄い嘘吐きますねぇ…。いい歳こいた童貞がこんなコアな真似を強要する訳ないでしょう」
「むしろそういう物知らず程やりかねないものですよ」
「マジでか!それは、えー、ちょっと怖い話を聞いてしまいましたね。いやいやいや、大丈夫、決して他言はしません。殊にデイダラさんや飛段さんなんかには口が裂けても言いません、言ったら面白そうだけれど、我慢します。ええ、我慢しますとも。…多分、出来るだけ」
「馬鹿な事を。肌を合わせて臥所を共にしたからと言って、そのまま一緒に寝るとは限らないでしょう」
「ああ、成る程。そういう事ですか。しかし体力ありますねえ…。そのまま寝たくなるモンじゃないんですか。急激な運動の後は休息をとるべきです」
「急激な運動ねえ…」
「急激な運動でしょう」
「そう言えばあなた、病み上がりと言えば病み上がりと言えなくもない状態でしたね。わかりました。今日はもう止めておきましょう」
「え?」
「続けたいんですか?」
「いや、ちょっと考えさせて下さい…。急転直下ですねえ。あれ、参ったな…」