第2章 木の葉
「…何でこうなんだよ?話が違うぞ、アスマ」
シカマルは焼き肉屋の座敷席でアスマとカカシに挟まれていた。
いのとチョウジは、離れたテーブル席で紅率いる八班のメンバーと楽しげに盛り上がっている。
「俺だけ隔離されてんじゃねぇか?おかしいだろ?」
「騙したみたいで悪ィけどな、お前だけ呼び出しても警戒して出て来ないかと思ってよ。まあそう怒るな、シカマル」
ジョッキ生の二杯目を頼みながら、アスマがひとつも悪くなさそうに笑う。シカマルは目を吊り上げて向かいのアスマと、何故か隣に座るカカシを睨んだ。
「騙したみたいじゃねえ。騙してんじゃねえかよ。アンタが"十班"に飯を奢るって話だったのに、何だこの状況」
「嘘ついちゃねえよ。席こそ違うがチョウジといのの勘定は俺持ちだからな」
「…磯と関わってからこっち、アンタとカカシ先生と焼き肉屋っつったら俺ン中じゃ完全にNGワードだ。もう帰る。でなきゃせめてあっちのテーブルに行かせてくれ」
「楽しそうだねー、あっちは。チョウジもいのも紅も八班もいるし、正直さ、俺もあっちに行きたいんだよ?髭面スモーカーと天才ものぐさ太郎といるよりずっと愉快そう」
カカシがにっこりする。アスマ以上に悪びれていない。それどころかケチをつけてきたカカシにシカマルは口元を引きつらせた。
「…カカシ先生。アンタは何でここにいるんスか」
「やだなあ、そんな言い方しないでよ。俺だって来たくて来たんじゃないんだし」
「じゃ帰ったらいいじゃないスか、アンタも。大体煮魚定食って、何だそれ。いよいよ居なくていいだろ、ここに」
「メニュー多くて嬉しいよねぇ、ここ。いい焼き肉屋だよ。煮魚も旨いし」
「……帰る。アンタが帰んなくても俺は帰る。肉も魚ももういい。俺は何にも食いたくない」
「いや待て、シカマル。大事な話があんだよ」
二杯目のジョッキを一気に半分まで空けてアスマが真顔で言うも、白い泡の髭がふざけているようにしか見えない。
「教え子に騙し打ちかけるようなヤツの大事な話なんか聞けるか。ぜってェロクな話じゃねえ」
「信用していた相手に謀られるのは辛い事です。若い美空でそんな思いをする羽目になるとは、他人事ながら私も胸が痛みますよ。…田酒あります?一本お願いします。いや、徳利じゃありません。瓶ごと一本です」