第2章 木の葉
「はは…そうですね。今お呼び頂かなくとも。ただ、伝言を頼みたいのです」
女は爺を見やって、自来也を見て、寸の間逡巡してからひっそりと口を開いた。
「…汐田が来たと。連れの者を頼むとお伝え下さいませんか?」
「へ…?磯辺…」
爺が何か言いかけた。が、自来也の視線に気付いて口を噤む。
自来也はナルトの襟から手を離して、寝台の傍らの椅子にかけた。
「そう言やわかるのか?」
自来也の問いに女が頷く。
「わかった。伝えよう」
「なあ、アンタさ、腹減んねえの?呑まず食わずなんだろ?体によくねえってばよ、そんなの!」
全然空気を読まず、いきなり話に割り込んできたナルトが、寝台の上に身を乗り出して女の顔をじっと見た。
「すげえ腹減った顔してっぞ?メシ食った方がいいって!…えーと、アンタ名前何だっけ?汐田?磯辺?どっちだった?ん?どっちもか!だよな!俺だって渦巻とナルトだもんな!」
女と爺を見比べて、不肖の弟子は能天気に笑う。
「汐田はラーメン好きか?すンげェうめェラーメン屋があんだってばよ!連れてってやっから奢っ…ハガガッ、なにひゅんはひょっ!」
ナルトの口元を摘み上げて自来也は呆れ顔をした。
「何すんだよじゃねぇわ!今コイツにラーメンなんか食わせたら命のカウントダウンが始まるっつうんじゃ、バカたれ!」
フと女の口から掠れた笑い声が漏れた。
「…私はしぶといのが売りだそうで、簡単にカウントダウンなどしません……」
女は顔を巡らせてナルトと爺を見た。
「ラーメンを食べるならこの人を連れて行って下さい、食べた事ないでしょう?」
「ないの⁉マジで⁉じいちゃん、何者⁉ありえねえ!」
「…はあ?そりゃそんなようなモンは確かに食うた事もないが、今お主から離れるのは気が進まんぞな、もし」
心配そうな爺に女は首を振った。
「大丈夫、大丈夫です。私は大人しく寝ています。…そのついでに奈良くんに先の言伝をお願い出来たら有り難いのです」
「わしは行かんぜ?」
即答した自来也に女は微笑んで口疾に告げた。