第10章 隠れた気持ち
話の繋がりが見えない智くんの質問に、聞き返す。
「指輪の子、」
「・・・はい?」
「翔くん、たぶん皆気づいてたと思うよ。言わないけど。」
「ええ!?」
その発言で、パズルのピースが合うように智くんの言葉の意味がハマる、と同時に頭の中が真っ白になる。気づいてるって何、誰が、何を気づいているの。
「隠してたつもりかもしれないけど、翔くんそういうの上手じゃないからね、色々見えてたよ。将来を決めた子がいるんだろうなって。」
「・・・うそでしょ、すげえダサいじゃん。」
「んなことないよ、羨ましい、そういう子に出会えて。俺らこういう仕事だし、上手くいかないことの方が多いから。」
「・・・でもまあ、1年前に振られましたけどね、渡す前に。」
「うん、だろうね。」
「え!それも!?」
「いや、みんなが知ってるかは知らないけど、翔くんの今回のソロ見て、ああそうなんだろうな、って。」
「・・・はは、智くん、こっち見ないで。俺今洞窟に入りたい。」
「ふふふ、ついて行くけどいい?」
「だめ。」
なんてことだ。言ってもないのに全部バレていたなんて。最悪だ、恥ずかしすぎる。
「あー・・・」と声にならない声を出す俺に智くんが「翔くん、」と呼びかける。
「伝えてない気持ちがあるから、動けないんだよ。オイラが言えることじゃないけど、」
ふふふ、と優しく笑う智くんがまた仏様に見えた。
伝えてない気持ち、そんなの
ありすぎてありすぎてありすぎて、
、だいぶ遅れたけど、聞いてくれますか。今となっては迷惑でしかないってわかってるけど、俺のために聞いてくれますか。あの日伝えたかった、本当の想い。